忘れ得ぬ一夜

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「お疲れ様です、企画の麻倉です。差し入れお持ちしました」  現場入り口にあるプレハブ建ての事務所に顔を出す。建設部の数名が缶コーヒーを片手にちょうど休憩に入っていた。 「おおーっ、麻倉さんじゃないですか。わざわざすみません。っと、あれ? 北山課長もいらしてたんですか」 「なんだよ、俺はついでか?」  どっと笑い声が起きる。工事が順調に進んでいるせいか、現場は和やかな雰囲気で、私はホッと胸を撫で下ろした。 「問題ないようで安心しました。これ、皆さんで召し上がってくださいね」  差し入れの袋を、作業台の空いたスペースに置く。あちこちからお礼の言葉が飛んできた。
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