Prologue

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 凍える夜気の中、木々の上で緩やかに明滅を繰り返すクリスマスライト。  瞳を輝かせて目の前を通り過ぎていくたくさんの人たち。  ……私は、こんな日に一人で一体何をしているんだろう。  『ごめん、涼香のせいじゃないんだ』  寒さにかじかむ手で、スマホをきつく握りしめる。  『でも、涼香じゃダメなんだ。本当に、ごめん』  搾り出すような彼の声に唇を噛んだ。  でも私は、去り行く男に縋りたくなどない。  これまでの人生で積み上げてきたプライドが、痛みに軋む心を必死に押し隠す。
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