忘れ得ぬ一夜

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 再度事務所に寄って、借りていたヘルメットを返し、課長と二人現場をあとにした。  ほんの一時間程度の滞在だったのに、体は驚くほど疲労を感じていた。土埃の舞う現場を出て、大きくため息を吐く。 「麻倉、車回してくるからちょっと待ってて」 「え? パーキングまで一緒に行きますよ」  社用車を停めたコインパーキングまで、歩いて5分もかからない。来た時も二人でそこから歩いてきたのに。 「一件電話かけたいし、悪いけどちょっと待ってて」 「……わかりました」  訳のわからないまま、歩道を歩いていく課長を見送る。  ふと、現場入り口に立つカーブミラーが目に入った。
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