忘れ得ぬ一夜

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「待たせたかな」 「いいえ、全く」  コンビニの駐車場に停められた白いエコカーの助手席に乗り込む。 「課長、珈琲いかがですか?」 「ああ、ありがとう」  買ったばかりの珈琲を手渡すと、課長は私の顔を見て、安心したようにふっと微笑んだ。  車はオアシスタウンのある郊外を抜け、雑多なビルが立ち並ぶ市街地へと入る。  週末ということもあってか、会社へと続く幹線道路は普段よりも幾分混んでいた。 「課長、今日はありがとうございました」  課長のさりげない気遣いに、今日はかなり助けられた。  レストランHiraの現場で、あの時課長が制してくれなければ。  感情に駆られた私は、取引先の人間である達哉にとんでもないことを口走っていたかもしれない。
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