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「課長は気づいてらしたんですね、私と上村さんのこと」
ハンドルを握り、前を向いたままの課長を見つめる。
私は、達哉とのことを誰かに口外したことは一度もない。
「まあ、ひょっとしたらそうかなあ? ぐらいだったんだけどね」
この人は私のことを本当によく見ているし、わかっている。
「課長は何でもお見通しなんですね」
視線は前に向けたまま、課長は僅かに表情を緩めた。笑うと目尻に皺が寄って、さらに優しげな雰囲気になる。
「麻倉を会社に降ろした後、もう一件予定があるから戻りは定時を過ぎると思うけど」
赤信号で車が停車し、ようやく課長と目が合った。
「飲みに行くか? 今夜」
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