忘れ得ぬ一夜

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 課長にはああ言ったものの――  全部忘れて仕事に没頭したくて、そう急ぐ必要もない雑務までこなして。  でもどうしても集中し切れなくて、定時を2時間ほど過ぎたところでキーボードを叩く手を止めた。  ……ダメだ、やってらんない。  出先から社に戻ってきた課長もとっくに見送り、私一人になったオフィスをぐるりと見回す。 「……もう帰ろ」  PCの電源を落として、週末持ち帰る書類を無造作に鞄に突っ込み、一人会社をあとにした。
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