Prologue

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「……そう。今までありがとう、楽しかったわ」  そう言って、自分から通話を切った。まるで私から別れを告げたかのように。  白い息を吐き出しながら一人、クリスマスの夜空を見上げた。  イルミネーションに彩られた街路樹の隙間から、うっすらとシリウスが輝く。  手元のスマホが、彼からの着信を告げることはもうない。  涙が一筋頬を伝う。  その時、私の情けない姿を隠すかのように、辺りを彩っていたクリスマスイルミネーションが、全て消えた。  クリスマスはもう終わり。夢の時間は、もう終わったんだ。 「……さ、帰ろう」  涙を拭い、空を見上げた。  本来の暗さを取り戻した夜空の中で、冬の星座が宝石のようなきらめきを放っていた。
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