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手元の書類に視線を落とす。
元恋人である上村 達哉とは、この仕事がきっかけで知り合った。
達哉が勤める総合商社が計画を進めていたショッピングタウン建設のプロジェクトに、コンサルタントの一人として参加したのが私だった。
物腰が柔らかく、人当たりも良い。それでいて、他人にはそう簡単に心の内側を見せないような、謎めいた魅力が達哉にはあった。
誘ったのは、私の方だ。何度目かのアプローチでようやく食事にこぎつけ、その夜のうちに、私と達哉は男女の仲になった。
今思い返しても、私のどこがいけなかったのかわからない。達哉もはっきりと、その理由を口にすることはなかった。
そのくせ、「涼香じゃダメなんだ」と私の全てを打ち消して、達哉は私の前から去った。
ちょうどその頃、プロジェクトがひと段落し、私と達哉が会うことはほとんどなくなった。職場で顔を合わせて気まずい思いをすることもない、というわけだ。
仕事の区切りが縁の切れ目だなんて、全くこの世の中はよく出来ている。
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