忘れ得ぬ一夜

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 私は建設会社最王手、曽我原(そがはら)建設の南九州支店に勤めている。  所属する企画部では主に、法人、個人を問わず、遊休地の土地活用を提案して、その土地を利用するテナントや企業の選定、誘致等を行っている。  先日まで、私と、同じ企画課の北山課長が中心となって担当していた隼人興産のオアシスタウンが、ようやく年明けから着工することになった。  私は、業務を引き継いだ建設部のメンバーに頭を下げると、手にしていた書類をファイルに綴じた。  途中でよっぽどの問題でも起きない限り、もうこのファイルを目にすることもないだろう。  きっと、仕事中に達哉のことを思い出すことももう、ない。
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