忘れ得ぬ一夜

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 季節は慌ただしく過ぎて、桜舞う四月。私は再び北山課長とコンビを組んで、再来年の夏開業予定の沖縄のショッピングモールの仕事に入っていた。  課長と二人で足繁く現地に通い、ようやく手にした仕事だ。自然と肩に力が入る。 「それじゃあ、再来週からまた出張入るから。よろしくな」 「はい、チケット手配しておきます」 「あ、麻倉」  自席に戻ろうと席を立ったところを、課長に呼び止められた。 「おまえ、この後空いてるよな」 「特に急ぎの仕事はありませんけど。何かありました?」
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