新しい学校

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懐かしい。この街には昔……すげぇ仲良くしてた奴が居たっけ。えっと……確か……名前は……。 柄原鞘子。 そうだ、柄原鞘子だ。 柄原鞘子と別れて10年以上経つのか。あの頃の俺達は7歳のクソガキだったな。二人は当時、何をするにも一緒だった。物心が付くくらいからの付き合いだもんな。 しかし、親父の急な転勤で引っ越し、転校せざるを得ない状況に陥り、あっけなく二人の関係は無になった。別れ際に何か約束していたような……していないような……。とりあえず何かあったような気がするが、10年前の事なのでよく覚えていない。 ともあれ、俺は10年ぶりにまたこの地に帰ることになった。両親が離婚して、俺は母ちゃんと一緒になった。そして母ちゃん側の実家でお世話になることになったのだ。もう転校先の高校も決まっている。たった一年しか通わないが、卒業まで頑張るつもりだ。めんどくせぇけど。 電車に揺られること数時間。ガキの頃7年間過ごした街に再び立った。駅から見た風景は当時と比べて多少華やかになったかな。新鮮な気持ちと同じくらい、懐かしさが込み上げてくる。 目をつむり、当時を思い出す。 「ただいま」 ボソッと呟き、歩き出した。桜の花が咲き乱れる4月……高校生活最後の一年が幕を開ける。
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