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サイコは夕食のトレイをおいていった。
「なんだか、おかしなことになってる。みんなタツオの銃撃戦の噂話をしてるよ。その場にはわたしもジョージもいなくて、タツオが単独で相手を倒したことになってる。いろんなバージョンがあるんだけど、敵はいろんな国のスパイで……」
サイコが周囲を見まわした。誰もこちらに注目していないのを確認してからいった。
「……うちの生徒じゃないことになってる。いったい、どういうことなのかな」
タツオはうつむいて、箸の先で皿の上の鶏唐揚げを転(ころ)がした。もうたべる気はしない。ジョージがいった。
「浦上くんのことを隠しながら、みんなの注意をタツオにだけ集中させたい。そんなところじゃないのかな。すくなくとも敵はあの夜の状況をしっかりと把握(はあく)していて、それを最大限に利用しようと考えた。そのためにタツオに狙(ねら)いを絞って、プレッシャーをかけようとしている」
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