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「逆島。すこし話をしたい。いいかな」
扉が開いた。立っているのは壁のような大男ソウヤだった。無言のまま手招きする。目があった。やはり敵を見る目ではなかった。冷たく平静な視線の奥に、かすかな親しみを感じる。タツオはつぶやいた。
「ありがとう」
ジョージもタツオに続いて、室内に入った。カザンは寮の一室のインテリアをすべて変えていた。デスクは重役がつかうようなウォールナットの高級品で、ソファや椅子(いす)はすべて革張りだ。
カザンは黒革のソファの中央でいらだたしげにいった。
「浦上のことでいい訳をしたいのなら、3分だけやる。それが済んだら、さっさとこの部屋を出ていけ。そうでないと、おまえをこの手で殺しちまいそうだ」
いきなり叫ぶように名前を呼ばれた。
「タツオ、おまえが幼なじみだなんて、腹がむかつく。浦上はどうやって死んでいったんだ。あいつはおれの片腕になるはずの男だったんだぞ」
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