第1章 序章

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少年は、母親に童話を読んでもらうのが、寝るときの習慣だった 暖かい母親の声を聴きながら、 いつも思っていた。 「どんなに出世しても、 僕は王様にはなれない。  たいてい、金持ちの子供が 世襲で王様になるものだ」 最近の若者の多くは、階級社会という現実に、子供の時から気づいている。 そして、少年は、こんな事も考える。 「僕は、こんな社会で くだばりたくはない。」 もう、たった6歳で社会に 身構えているものなのだ。 そうして、10年が過ぎ、 16歳になった若者は、 今度は、くだらない事ばかりの 現実世界で いよいよ自殺を考え始める。 そして、父親に向かって言い放つのだ 「あんたがその年で、メタボでも、 加齢臭でも、禿でもいいじゃないか  どうして、諦めるんだよ。    あんたは、ただ振り回されて、 すり減ってるだけじゃないか!」 そして、危険な一言を言い放つ。 「俺は、あんたみたいになりたくない」 でも、若者よ、言い過ぎない方がいい、 君はDNA配列に従い、 この父親とそっくりになるのだ。 「いつだって、人生は、 いろんな可能性がある。  人生はいろいろ面白い事が あるんだよ。  地震が来たり、事件に巻き 込まれたり、宝くじにあたったり、  予想がつかないことがある」 そして最後の一言だ。 「でも、最後は、全員死ぬんだから、 気にすることはない」  家族とは、 血のつながらない一組の男と女が 同居し繁殖しはじめ、 やがて子供を作り、 その子供を育てる組織である。 近代社会では、人間たちは、 絆とか愛と称して、 その意味に重いものを持たせるが、 共通するDNAの項目が多いだけで 意外に関係が薄くなってきている のも事実だ。 だから、時として、 家庭崩壊は起こりうるのだ。
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