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好きなんです。
ずっと、ずっと好きなんです。
授業中、頬杖をつくその表情。休み時間、皆と過ごすその雰囲気。放課後、一心不乱に部活にうちこむその姿。
特別顔が良い訳じゃなかった、でも、惹かれた。これが恋か、自覚するのにそう時間はかからなかった。
自覚してからは、まるで毎日が変わった。チープな言葉を使うなら、百八十度ひっくり返った。
視線はいつだって彼を追いかける、彼をおって、どこまでも。朝、昼、晩。来る日も来る日も胸を焦がした。
いっそ。告白してしまおうか。
そう思ったことも多々あった。でも止めた。彼には、彼女がいたから。
望みのない、恋だった。
大好きです。
そう言えたなら、どんなに幸せか。聞いてもらえたなら、どんなに幸せか。
けれど。彼が彼女に一途ってことは嫌というほど知っていたから。
だから、勝算の全くない告白なんてしたくなかった。
好意を知られて、距離を置かれるくらいなら、友人として傍に居たかった。
ただ、それだけの気持ち。
愛してるんです。
だからこそ、彼女と別れたと聞いたとき、不謹慎にも喜んだ。付け入る隙が出来たと。
時に励まし、時になだめ、時に話を聞いて、ずっとずっと傍にいた。
あれだけ彼女の事が好きだったんだ。私が彼の事を好きなように。
すぐに彼から彼女が消えるわけない。私は何年でも待つ気だった。
そうして、春が二度めぐった頃。中学校の卒業式に私は彼に告白した。
彼はとても驚いていた。私の事をそんな風に思ったことがないと。それでも、これからはそういう風に見ていきたいと。
だから、来年の春。また、告白してほしいと。長いけれど、それまでにちゃんとけじめを着けるからと。待ってくれるかと。
勿論、私は首を縦に降った。
有頂天だった。付き合った訳じゃなかった。けれど、一緒に出かけ、手を繋ぎ、笑いあって。
彼が大好きだった彼女を、少しずつでも塗り替えていっているんだと。
彼に、想ってもらえるようになると、信じていた。
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