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もう、ここまで言えば分かってもらえるだろう。
私は結局、彼と幸せになることはなかった。
約束の春、私がもう一度告白をする前に、彼に呼び出されたのだ。
どうしてか、嫌な予感がした。根拠はない。けれど、頭の中ではずっと初めて想いを伝えてからの記憶が、流れていた。それがなんだか、一種の走馬灯のようで。
怖くて怖くて、仕方なかった。
そうして。彼に呼び出された場所に行けば、そこには彼が大好きだった彼女がいた。……いや、彼女ではなかった。彼女の面影を色濃く残したその少女を彼は彼女の妹だと紹介した。
ああ、終わった。なんとなく感じた。私の恋は終わったんだ。
案の定、彼は、恋に、落ちたらしい。たかが三日前にあった少女に。されど過去に自分が愛した彼女にとてもよく似た少女に。
だから、私にはっきりと伝えたかったらしい。もう、私の気持ちには答えられないと。
………ああ、そうか。そうなのか。
私の四年はこんなにも脆かったのか。こんなにも、こんなにも、意味のなかったものなのか。
幸せそうに笑う彼に、初めて黒い感情が生まれた。今までにも、嫉妬はあった。けれど、それはこれほどまで黒かっただろうか。
幸せそうに笑う少女に、黒い感情が粘り気をおびるのが分かった。目の前の少女は自分とは反対に幸せそうに、無邪気にはにかんでいるのに。
体の力が全て抜けた。エネルギーが消えて行く。
何故かすぐに口角は上がった。それは多分笑みとは言い難い表情だろうけど。
それからすぐ、私は踵を返した。
見ていられなかったから。言葉もかけなかった。かけられる余裕などなかった。
分かるのは、これが決別だと言うことだけ。
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