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「私ね、ロキ」
「ん?」
「私ね。一週間後に引っ越すんだ」
声色が変わり、アンの頬から一粒の涙が流れた。
ロキは驚きを隠せない様子でアンの話を聞いた。
「何度も、何度もお父さんに頼んだけどどうしてもダメだったの」
「もうあの猫達とも会えなくなっちゃうの。もちろんロキにだって…」
と唇を強く噛み締めた。
最初は理解出来なかった。
ただ、アンの声を聞く度に言葉の意味が分かってきた。
アンのその姿を見ることが出来なくなってしまう。
それだけが頭をよぎった。
一緒に積み上げたものを無くしてしまうのだろうか。
いや違う。
アンはこれを話すのが怖かったのだ。
この二人の絆を断ち切ってしまうような言葉を口にしたらいけないと思ったのだ。
しばらく沈黙が続き、ロキは力強く口を開いた。
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