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盗賊団の男達は散開すると、無防備な旅人達を襲った。
胸を何度も突き刺し、短剣を抜いて死体を転がすと次の旅人を切りつける。
洞窟内は血の池だ。
傍らで髪を束ねた男が何食わぬ顔で血が混じった泉の水を口に含んだ。
「な、何をするんだ! お前達は何者だ!」
盗賊に掴まれた旅人が悲鳴を上げた。
「エルトゥ盗賊団だ。地獄の奴等は皆知ってる」
言い終るや否や、盗賊は旅人ののどを掻き切った。
死体を隅に蹴飛ばし、血を払って短剣を革の鞘に納める。
石の洞窟内に立っているのは盗賊団だけとなった。
「始めよう」
髪を束ねた男が手をかざしながらゆっくりと泉に入っていく。
泉の水が縦に割れ、底に立つ水瓶・ロハスまでの道ができた。
水に触れることなく泉の底へ歩んでゆく。
男が水瓶の縁に手を触れると、ロハスは水を吐き出すのをやめた。
魔法の瓶は、ただの瓶になったのだ。
「あっけなかったですな」
「これが伝説の英雄だとは、俺には信じられん」
髪を束ねた男が瓶を叩くと、ペチ、という虚しい音が洞窟に響いた。
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