112人が本棚に入れています
本棚に追加
――砂漠を歩き数日後。
ジャヤという、商人が往来する町。そのある宿屋。
少女は床で仰向けに寝る少年・ヨランの隣に、膝から静かに座った。
粗末な土レンガの建物内には涼しい風が流れてくる。
静かな寝息を立てるヨランの額の濡れた布を取り除き、よく水を絞った布を代わりに乗せた。
パチリと目が開く。
「うわ!」
ヨランは声を上げながら飛び起きた。
額に乗る布が少年の足まで飛んで行く。
あたりをキョロキョロと見回し、気が動転している様子だ。
「よかった! やっと目が覚めたのね」
声を掛けると、少年は少し怯えた顔で少女を見た。
「もう大丈夫よ」
すこし大人な少女は少年の背中に手を当て、優しく声を掛けた。
「ここは……?」
焦燥した顔で尋ねると、少女は笑顔で答える。
「私の宿。具合はいかが?」
ヨランははポケッとした顔になった。
途端、腹の虫が鳴き始める。
「腹……へった」
「3日も寝たきりだったのよ。ちょっと待ってて」
少女は立ち上がると、部屋の奥へと消えた。
最初のコメントを投稿しよう!