第1話 魔法の瓶と黄金のスカラベ

8/40
前へ
/498ページ
次へ
――砂漠を歩き数日後。 ジャヤという、商人が往来する町。そのある宿屋。 少女は床で仰向けに寝る少年・ヨランの隣に、膝から静かに座った。 粗末な土レンガの建物内には涼しい風が流れてくる。 静かな寝息を立てるヨランの額の濡れた布を取り除き、よく水を絞った布を代わりに乗せた。 パチリと目が開く。 「うわ!」 ヨランは声を上げながら飛び起きた。 額に乗る布が少年の足まで飛んで行く。 あたりをキョロキョロと見回し、気が動転している様子だ。 「よかった! やっと目が覚めたのね」 声を掛けると、少年は少し怯えた顔で少女を見た。 「もう大丈夫よ」 すこし大人な少女は少年の背中に手を当て、優しく声を掛けた。 「ここは……?」 焦燥した顔で尋ねると、少女は笑顔で答える。 「私の宿。具合はいかが?」 ヨランははポケッとした顔になった。 途端、腹の虫が鳴き始める。 「腹……へった」 「3日も寝たきりだったのよ。ちょっと待ってて」 少女は立ち上がると、部屋の奥へと消えた。
/498ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加