第1話 魔法の瓶と黄金のスカラベ

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ヨランは伸びをしてぼーっとした頭を掻くと、思い出したように胸元を探った。 白いボロボロな服の内側から出てきたのは、スカラベを模した黄金のペンダントだ。 触るとほのかに暖かい。 これを見た途端、安堵の息を吐いた。 「目覚めたか、寝坊助」 低い声がした。 部屋に現れたのは少女ではなく、黒いマントの男だ。 黒い服で長身痩躯の身に包み、切れ長の目は暗い。 黒い髭、黒い蓬髪、頬はこけ、危険な雰囲気を醸す男だ。 「お前は……」 ヨランは怒りに震えた。 後ずさり、歯を立てる。 「この人殺し!」 ヨランは立ち上がり、男の服に掴みかかった。 少年の胸元で黄金のペンダントが踊る。 男の目が黄金のスカラベに向けられる。 「頭を冷やせボウズ。お前が選択したことだ」 「何を!」 「や、やめて!」 ちょうどスープを運んできた少女が声を上げる。 ヨランは駆け出し、宿から出て行った。 「まだじっとしてなきゃ……! もう。どうしたのかな、急に」 男はゆっくりと床に腰かけると、少女を見上げた。 「追いかけてやれ」 少女は頷くと、少年の後を追った。
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