∽†∽ 皆既月食 ∽†∽

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∽†∽ 皆既月食 ∽†∽

光が影に覆われていく すべてが闇にのまれてしまう そのまえに 君を捉えようと こころみたけど 僕のレンズでは 君を捉えきれない 君の光があまりにも 眩しくて 消えてしまいそうだ 君の光が夜の闇と 同化していく なんて哀しげな光景 光が消えていく 君が消えていく 僕も消えていく 真ん丸な光はもう… 僅かにしか見えない あの光は君そのもの? 違う… あの消えそうな光は 過去の栄光 かつて一瞬だけ輝いた 僕の残像 あの光が夜の闇と同化するとき 僕には新しい光が見えてくる? 月の光は僕に囁く 「私があなたの影に 消えたように見えたとしても あなたの後ろに隠れてみただけ わたしも誰かの影に 隠れてみたいときがあるのよ ねぇ あなたの影に隠れても 私のすべては消えてないでしょ? よく見て 薄っすらと見える私の輪郭 ほんのり赤く見えるでしょ? あなたの影に包まれて 癒やされてるの そして私はまた光を取り戻すのよ」 あの影が僕の影であるのなら 君の光を包む影であるのなら 僕はあなたの影でいられる もうすぐ地球にのまれそうだよ ほんのり赤みをおびた月 照れくさそうに 黒いレースのカーテンに包まれて 僕に満たされてくれるのかい? また光輝くのだろう
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