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あの頃は、毎日部活と塾とピアノで忙しかった。
そんな中ほっ、と一息つけた時間。
それは塾の帰り、夜空を見上げながら歌うこと。
あれは確か10時30分頃。
受験生の夜はそよめく流れに身を任せたり、突き刺すような風に首をすくめたり。
わかる星座は夏の大三角形とオリオン座だけ。
それでも目を凝らして遠すぎる光を見つけるのは楽しかった。
1人で誰にも見られてない時間は限りがある。
さっと周りを見回して、誰もいないことに安堵して……。
上を見ながら、歌う。
ただ、それだけ。
スリルがあって、好きだった。
他の人には言えないし、言いたくもない。
ちょっとした贅沢だった。
まさかそれを見ている人がいるなんて思わなかった。
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