第1章

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「お前、音痴だよな」 ぼそっ、と耳元で聞こえて、振り向いたら、意地悪そうな顔した橋本がいた。 「そうだろ?」 「えっ。何のこと?」 「とぼけんなよ……。毎日夜歌ってんだろ。」 それだけ言って、橋下くんは男子たちのところに行ってしまったから、あたしは宙ぶらりんで、困る。 ごまかすのに必死だったけど、ばれたなら、歌わないようにしよう、と決意した。 あれから2日たった。 だんだんいらいらしてきて、もういいから、歌おうって思った。 すぐさっきまでの自分でさえ信じられないあたしは不確かなものに惹かれる。 確かにあるけれど、頼りなくて、はっきり見えない。 そのくらいの方が安心できる。 そんな理由で歌うのが好き。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加