第1章

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明智さんはお婆ちゃんに勉強を教えてもらっている。 いきなり、バレたらおしまい。 なんてことにならないように。 「炎狼さんは勉強しないのかい?」 「なんの」 「歴史」 一気に頭が冷えた。 「お庭に行っていていい?」 「どうぞ」 お婆ちゃんの勉強はまだ長くなりそうだったので…訂正、あのままあそこにいたらオーバーヒートだけでは済まないと思った。 『相変わらず、勉強は嫌いだな』 水孤がため息混じりの言葉を言う。 「勉強なんて必要ない」 『ある程度はしないとだな』 「生死の境目に立たされる時に勉強なんてする?」 『我はわからん』 「待つ側と試す側だもんね…」 『我は待つ側も試す側も飽きたから夏世に従ったのだが…』 癒されるはずの緑豊かな庭を見ているはずなのに心が癒されない。 『うむ?』 「どうしたの?」 『勉強が終わったらしいな』 「ふーん…」 私は庭の中心に立つ。 警戒心が強いはずの雀が何羽、左手の平に停まる。 小さいながらも生きているんだ、と思い微笑んだ。 「あ」 「?」 縁側に明智さんが居た。 バサバサ、と雀が飛びだつ。 ‘綺麗’と口元が口ずさむ。 「え?」 「あ!え、と…お婆ちゃん、が暗くなる前に帰ったほうがいいって…」 「あ…そ、そうだね」 私は縁側へ歩く。 「おや、水孤と話をしていたのかい」 明智さんの一歩後ろにお婆ちゃんがいた。 「そんなに話してない」 「そうなのかい?」 『うむ』 明智さんは首を傾げた。 「明智さん、行「光秀」え?」 「あたしと二人っきりの時は光秀でお願い」 あたし以外の誰かがいたら‘桔梗’でいいから、と抱きしめられた。 「え、あ、え?」 お婆ちゃんはおや、おや、と微笑んでいる。 水孤はイチャつくのは別のところでお願いする、とため息混じりの言葉。 「炎狼さん、何かあったらお出で、桔梗さんと一緒にね」 お婆ちゃんの家からまた学校へ、学生寮へ歩く。 「勉強はどうだったの?」 「楽しかったわ」 「帰る時は覚えていないのに?」 「そこが損よね」 私の部屋は学生寮の最上階にある。 、とは言っても学生寮の屋上に建てられた部屋、と言っておこう。 ドアを開けて、小さい机に向かい合わせになるよう座る。 「どれが名なの?」 あー 「炎狼夜桜川 空乃(エンロウヨザクラガワ ソラノ)」 「空乃って呼ぶわ」 よろしくね、空乃、と。
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