はじまり

12/16
前へ
/16ページ
次へ
 だけどある程度実力が拮抗する者同士で戦うと、もはやコンマ数秒での戦いになるようで、そうなるとじゃんけんと変わらない。適当に出して適当に負けて、適当に勝つ。その勝率を上げるのが予測だそうだ。経験で相手はこう出るとか、そんな心理戦、頭脳戦になる。  つまり空手の強いやつってのは、腕っ節が強いだけじゃない。  そう、二宮は策士でもあったのだ。  何せ僕は間接的にフラれたのだ。その心理的ダメージは計り知れず、そんなところに「好きなんです」とか言われたらもうどうにでもなれ! って気分になる。そこを二宮は突いて来た。見事なまでに急所だ。悶絶必須どころかテクニカルK.Oだ。  断れないよね。むしろ心中お察しな男子高校生の場合、「実は僕も……」なんて適当な言葉を述べる場面だろう、今は。  だけど二宮にとって予想外なのは、僕にはまだやる事がある、という事だろう。これが今の僕の支えで、これがなければそのつっかえ棒的役割は二宮が担っていた事間違いなし。  だから僕は言うのだ。 「ごめん、二宮。あと四日ほど待ってくれないか?」 「べ、別にいいけど……四日後って何かあったっけ?」  別に何も無い。ただ四日後には、生徒総会が待っていた。 「続きまして、携帯の持ち込み許可に関する案件です。これにつきましては、生徒会の湯吹先生からお話があります。……湯吹先生、お願いします」 「あー、こんなもん当然許可出来ないから議題に上げるなって言っておいたんだけどな。……まあいい。分かると思うが、却下だ。今月既に七名もの生徒が、携帯を鳴らして没収されている。これが一人もいないのであればこっちも譲歩出来るが、そうでない以上無理だ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加