はじまり

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 あの一風変わった価値観を持った女子は、校則で禁止されているから携帯を持って来ていなかった。だからその校則を、僕は変えたかった。変えた。でも何も変わらない。むしろ山下は高校で高野とラブラブメールでもするようになるかも知れない。悪化だ。そういう意味では変わったな。最悪だ。  でもあれだ。人生なんてそんなものだろう。山下は高野と付き合って、僕は二宮と付き合う。思い通りにはならないのだ。分かっていたさ、最初っから。  机の中を整理して、帰宅の準備をする。その時だった。 「あら、東雲くん。今帰りかしら」  ガラッと、音を立てて扉が開いた。そうして教室に入って来たのは、眉間に皺を寄せながら携帯の画面にタッチをする山下だった。 「あ、あれ……山下?」 「何よ。私がそれ以外の何に見えるのよ」 「いや、自分の事をそれ扱いかよ……って、そうじゃなくて! お前、高野とデートじゃなかったのかよ」 「デート? 何の事かしら」  首を傾げてとぼける山下。視線は画面に固定されたままだ。 「だってお前、高野に告られて、その返事を……」 「ああ、あれね。返事はしたわ。取り敢えずお友達からって。だから今日記念に遊びに行ったのだけれど……今日って普通に学校じゃない? なのに意味もなく休むなんて、校則違反だわ」  だからお友達関係も解消して来たの、と何も知らない彼女は呑気に言った。  ……おいおい、それってありかよ。
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