10人が本棚に入れています
本棚に追加
1
放課後の教室で、僕たち二人は黙々と作業に興じていた。
「時に山下。お前は男女間の友情が成立すると思うか?」
「思うわよ。現にあなたと私は友人じゃない」
「だがそれはお前の言う通り、僕たちが友人であった場合のみ適用されるはずだ」
「……何が言いたいの?」
「実はだな、僕はお前の事が好きになってしまったようだ」
「ダウト」
「正解」
そんなやり取りをしつつ、僕らは一週間後に控えた生徒総会に提出するクラスの要望をまとめていた。
何故僕たちがそんな事をしているのかと言うと、実は思考せずにただ右倣えの世界に反抗すべく手始めに提出しなければいけないレポートを出さないという事を試みた結果、当然の如く罰として雑用を任されているなんていうのは嘘だとして、ただ単純に僕らは委員長と副委員長というクラスのリーダー的存在であるためこうして面倒な事をしているというわけだ。
ちなみに僕が委員長だと言うと皆は怪訝な表情を浮かべるが、安心して欲しい。僕は副委員長の補佐をする委員長なのだ。そのため仕事に抜かりは無い。
「ん? 何だこれ……夏休みの宿題を減らして欲しい? 山下、こんな意見は入れなくていいだろ」
中学生じゃあるまいし、この意見を取り上げられるなんて本人も思っていないだろう。
「そう? まあ私はどうでもいいけど」
そう言うと山下は、はい、とこちらに一枚のプリントを手渡してくる。どうやら書いた本人のものらしい。
「誰だよこんなの書いたやつ……あ」
僕だった。
「委員長特権で提出も可能だけど?」
「止めてくれ!」
しかしあれだ。確か僕の記憶が正しい……わけがないのでプリントを見ると、提出期限は三日前になっていた。男子三日会わざれば刮目してみよと言うけれど、本人の場合はどうやって見ればいいのだろうか。というか毎日鏡の前で顔を合わせているはずだが、今の僕はどうやら三日前の僕を中学生と言える程度には成長しているらしい。喜ばしい事だ。
最初のコメントを投稿しよう!