10人が本棚に入れています
本棚に追加
「しっかしさ、こんなにも出るもんなんだな、要望って」
「東雲くんは何か要望とかないの?」
「僕は別に求めるものなんてないなぁ。現状に満足しているわけじゃないけど、かといって変えようとも思わないし」
学校なんてそんなものだろ。良く言えば子供たちの溜まり場、大人の養成所。悪く言えば動物園。育てようとしている癖に、出た杭は容赦なく打つ。足並み揃えてさあ大人の世界へゴーってね。JIS規格かよ。
「その割には提案書の一番上、女子のスカート丈に関する要望になっているけれども」
「……そう邪推するなって、たまたまだよ」
……まったく。
「どうしてバレた!?」
「心の声が漏れているわよ」
「しまった!」
だが時既に遅し。山下の僕を見る目は冷ややかなものとなっていた。もしもこれが本当に冷気を発しているのなら、夏場の今大変重宝するだろうなんて馬鹿な事を考えつつ、僕は仕事に没頭するフリをした。もちろん提案書の位置を変える事などしない。
「……一周回って感動さえするわ」
「いやー、照れるね」
「後で殺すわよ」
「殺害予告!?」
そこは普通、褒めてねえよ! ってツッコミが入る所じゃないんですか!? しかも後で殺すって、しっかりと仕事はさせようとする辺り物凄く冷静じゃないか!
「あー、山下は要望とかないのか?」
あからさまな話題逸らしではあったが、優しい副委員長様は黙ってその話題に乗ってくれた。
「そうね……仕事の出来ない委員長を変えて欲しいわ」
「ぐさっと来た! 今確かに突き刺さった!」
欠片も優しくなかったぜ! というか砕かれた優しさの欠片が突き刺さった感じだね!
「……冗談よ。相棒が東雲くん以外の人なんて、私嫌よ」
どきっ、と心臓が跳ねた。
最初のコメントを投稿しよう!