はじまり

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「それより、聞いた?」 「聞いたよ。どうやら僕の身長は去年より二センチも伸びたようだ」  さっき保健室で保険医に聞いた。 「それはおめでとう! ……ってそんな事はどうでもいいよ!!」 「ああ、そういえば今日は都心で雹が降るらしい。真夏なのに」 「マジで!?」 「いや嘘だけど」 「何でそんな意味のない嘘をつくかな!?」  意味はなくとも得はする。楽しいし。 「あーもう! しのしのと話すと気が付いたら凄く脱線してるんだよね!」  馬鹿め。僕に言葉で勝てると思うなよ。 「でさーしのしの、」 「そういえば今日、」 「妨害は悪と見做すよ?」 「続きをどうぞ、プリンセス」  馬鹿め。僕が言葉以外で勝てると思うなよ。  ちなみに、しのしのとは僕のあだ名だ。二宮限定ではあるけど。 「高野くんっているじゃん。イケメンの」 「あー……芸能事務所にスカウトされたって噂の?」 「そうそう! その高野くんがさー、昨日の放課後に告白したらしいよ、女子に」  それが男子だったらびっくりするが、やつも男。好きな女の子の一人や二人は居るだろう。僕は一人だがな! ……我ながら至極どうでもいい。 「ジャスティス……ウーマンのお前が恋愛沙汰に興味を示すなんて珍しいな」 「何せ相手はイケメンの高野くんだからね!」  なるほど、以外にミーハーってやつなのか二宮は。ちなみに僕はミーハーの意味が分かっていないが、こんな使い方であっているのだろうか。 「きっと女子たちの血みどろなバトルが展開されるはず!」 「そっちかよ!」  やっぱり二宮はジャスティスマンだった。 「事件のにおいがぷんぷんするよ!」 「大半はお前の所為になると思うがな」  得意技:引っ掻き回す、だからな。こいつの場合。  まあでも、大抵の人間は空手黒帯であるこいつを敵にしようとは思わないだろう。しかも全国大会制覇者だしな。化け物かよ。 「んで、イケメン高野くんの意中の相手は誰なんだ?」 「それがね、山下さんなんだって」  顔が引き攣るのを自分で感じた。そう言えば昨日、やけに急いでいたしな……。
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