願い

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眠るあなたの姿に そっとキスをした。 白いシーツの上で あなたは 瞳をとじて 水をこぼした。 私にはあなたしか あなたしか いないのに あなたはそれを 知っている。 だから言ったの。 ”しあわせになってね” やさしかったあなたを となりにいたあなたを 運命がぜんぶ飲み込んだ。 遠い記憶にまぎれて映る あの痛みも幸せもぜんぶ ぜんぶ、あなたのもの。 ”しあわせになってね” あなたは知っている 私にはあなたしかいないこと だから言ったの。 もう二度と会いたくないと あなたは願ったから。 人は星になんてなれない 人は消えるんだ 天国も地獄もない あるのは闇だけだ 存在自体が「無」になる。 だからあなたはいったんだ ”しあわせになってね” だからあなたは願ったんだ もう二度と会いたくない これが私への 最期の願いなら。
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