残った温もり

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空から落ちてくる水が 私の身体を濡らしていく 頬を伝う雫がぽつりと地面に落ちて 溶けていってしまった 湿った服で重くなっていく身体 今日は雨が降ると天気予報で 言っていただろうか それはいつだって なんのまえぶりもなく 私の上に降り注ぐ どうやらここには もうなにもないみたいなんだ すべてなかったことみたいに 跡形もなく消えていた それは優しくて、暖かい 私にとって、失ってはいけない 心臓のようなものだった だけど、もうここには なにも残っていないみたいだ 雨に混じって流れ落ちる雫は やっぱり温かいと思った。
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