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暖簾(のれん)を潜り、見渡すと、
客のざわめく隅に、二人掛けのテーブルを見つけた。
「こちら空いてるぅ?」
不意に声を掛けられて、男は顔を挙げた。
「ぁあ、どうぞ、空いてるが」
「ありがとう、ここしかなくてさぁ。
では…失礼するね」
腰を降ろした女は、改めて向かいの男を見た。
そうして尋ねた。
「……何を?」
男はゆっくりとまた顔を挙げて、
「ん……見ての通りじゃ」と、言った。
女は軽く頷くと、厨房の方を振り向いた。
そして、手を挙げて振った。
「ねえ~~すいませーーん!
ウーロン割りと、それに刺し盛りをお願いねーーー!
だからさぁ、何ぃ描いてんの……ぅん?」
「飲んで憩う人達じゃょ」口調にはうんざりさが漂っていた。
ゴトリ
ほどなくしてウーロン割りと、刺し盛りは届けられた。
「早いね。まぁ、何かの縁じゃ。乾杯でも……」
「そうね。
じゃぁ、かんぱいっ!」
カチン
「ングングッふ~~っ。
初めて見る顔じゃな」
「そうかな……会わないだけじゃないの。
楽しいの、それって?」
女は指して言った。
「別にぃ、これで喰ってる訳じゃぁないけぇ」
「私なら幾ら?」
「何が?」
「ねぇ、私を描いて」
「はあ……なら五十万!」
「いいわよ」
「………」
「ほら、お金なら有るわよ」
女は財布から取り出して見せた。
「二百万くらい有るかな」
ちょっと驚いた男は、
まじまじと女を見つめながら応えたのだった。
「分かったから、じゃぁ、ここの飲み代じゃ」
「ぅふふふ……いいわょ」
「なら、さてと」
「私は何を、裸に?」
「アハハハ……
今のあんたなら、ここで裸になりそうじゃな。
普通に……そのままで良いよ」
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