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棺で眠っているA子は、まるで生きているようでした。
綺麗にしてもらえて良かったねと、おばさんはA子の頭をずっと撫でていました。
通夜には多くの生徒と職員が訪れて、A子の死を悼みました。
A子のご両親は、泣いている生徒一人ずつに、A子と仲良くしてくれてありがとうと、お礼を言っていました。
そのとき、式場の入口が騒がしくなりました。
これは予想されていたことで、おじさんは葬祭業者に耳打ちをしました。
集まっていた人たちは、お清め室へ移動させられて、式場には私とA子のご両親だけが残りました。
すまないね、とおじさんが言いました。
いいえ、と私は応えました。
私にはどうしても確認したいことがあったのです。
式場に入ってきたY子は、そんな状況を訝しがる様子もなく、淡々と焼香を済ませました。
「あなたがA子を殺したのよね」
私がいうと、Y子はA子にそっくりな笑みを浮かべました。
顔の造形はまったく違いますが、私にはそうだとわかるのです。
「なにを言ってるの。私がそんなことをするわけないじゃないの」
私はY子の反応で、Y子がA子を殺したのだと確信しました。
それは、A子が以前に一度だけ、私に大きな嘘を付いたときの態度とそっくりだったからです。
「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。A子は本当に幸せでした」
おじさんとおばさんの肩が、びくりと震えました。
私は怒りのあまりに、手元にあった椅子をY子に投げつけていました。
椅子はY子の手前に落ちて、Y子には当たりませんでした。
頭に血が上がり過ぎたのでしょう。
私は強い吐き気と脱力感を覚え、いつの間にか意識を失ってしまいました。
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