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月曜日、葵にぃとパシリ契約を結んだ僕はいつもより早起きをしてお弁当を作って家を出た。
風紀委員の朝は早いらしく、生徒たちが登校する時間には校門に立ち、身だしなみチェックや挨拶運動、そして抜き打ちの持ち物検査など様々な活動を行なっているらしい。
「僕を待たせるなんていい度胸してるね。」
知っているその声に慌てて駆け寄ると家の前で腕を組んで待っていたのは葵にぃだった。一緒に行くなんて約束していないはずなのだけれど。
幼馴染の僕たちの家は近くで、歩いて1分もかからないところにある。
「ごめんね。おはよう、葵にぃ。」
「おはよう。」
ヘラっと笑顔を向ければ、プイッと顔を背けて返事をしてくれる葵にぃ。小柄なのに歩く足が速くて、僕はパタパタと走ってその後ろをついていく。
「葵にぃ、何か嬉しいことあったの?」
「はぁ?」
その表情は他の人から見たら怒っているようにしか見えないかもしれないけど、僕からしたら照れ隠しにしか見えない。
葵にぃは気づいてないけど、何か嬉しいことがあったりすると自分の耳を弄るんだ。可愛くて他の人には秘密にしてるんだけどね。
「今日から1週間、犬の世話をするんだから嬉しいわけがないだろ。」
(あ、また耳触ってる。)
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