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「俺のこと、東雲さんじゃなくって朔って呼んでくれない?」
「えぇっ!?」
素っ頓狂な声を上げてから、思考停止、それから頭を横にブンブン振って拒否する。
「それ、それっ、それはできませんっ」
「どうして?」
子犬のような瞳で見つめてくる東雲さんに何も言えなくなるが、先輩のことを名前呼び捨ては流石にできない。
「俺は飛鳥に朔って呼んで欲しい。」
「だ、だから…それは無理、です!」
「…そっか」
あからさまにシュンと落ち込んでしまう東雲さんに何かしてあげたくなる気持ちが溢れてくる。
僕が困っているのが分かったのか、東雲さんはクスッと笑って顔を上げた。
「ごめんね、困らせて。いいよ、そのままで。」
そしてお弁当をお米一粒残さず食べてご馳走さま、と手を合わせた。
「さく、せんぱい…」
「え…」
恥ずかしくて、顔を見れない。
それでも声を絞り出すようにして伝えた。
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