第4章

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反応がなくて、ギュッと瞑っていた目をゆっくり開き東雲さんの様子を窺う。すると思ってた反応と違って、僕は目をまん丸にした。 「ご、めん…ビックリして……はは、意外とありかもしれない。」 誤魔化すように笑った東雲さんは、さっきまで驚いたように固まっていて、いつもの飄々として余裕のある東雲さんの雰囲気とギャップがあった。 「君には本当、敵わないね」 俯いてしまった東雲さんの表情は、さらりと金色の髪が隠してしまって見えなかった。髪の間から覗く耳にはピアスが1つついていて、風紀の人なのに良いのかなと思って見ていた。 ゆっくりと顔を上げた東雲さんは伏せていた瞳をこちらに向けて、甘い笑みを見せてくる。 「嬉しいよ、飛鳥」 女の子なら蕩けてしまいそうな微笑みとイケメンボイスに、僕は嬉しいと思ってくれていることが嬉しくて、でもどう反応していいかわからなくてお弁当をかきこむように食べた。 ほっぺをパンパンにしてもぐもぐと咀嚼しているところでさえ、頬杖をついて甘ったるい視線を向けられてむずむずした。 「もっと呼んでよ」 さっきの驚いた顔はどうなったのやら、東雲さんはいつもの余裕な感じに戻っていて、昼休みが早くおわってくれと強く願った。
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