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「東雲、仕事しろ。」
さっきまで仕事に集中していた葵にぃは東雲さんに声をかけてくれた。もしかしたら僕を助けてくれてくれたのかもしれない。
「飛鳥が来てるって知ってたらもっと早く来たのに」
「知らん。早く席につけ。」
しの…朔先輩は振り返って葵にぃに返事をすると、席に戻っていった。
「…飛鳥、沸騰してる。」
そう言った葵にぃは少し機嫌が悪いような気がして心配になったが、僕は慌てて火を止めた。
手際よくお茶の準備をして、お盆に乗せていく。
「どうぞ…」
「…!あ、ありがとう…」
僕の存在に一瞬は驚くものの、すぐに目を合わせてお礼を言ってくれる。それが嬉しくて、お茶を渡していって最後のマグカップ。
「はい、葵にぃ」
「あぁ…ん?」
コト、と置いたマグカップには目もくれず、パソコンを見ていた葵にぃはスンと匂いを嗅いでマグカップに視線を向けた。
「わかってるじゃないか」
「うん。葵にぃ、コーヒー好きだもんね。」
パソコンと睨み合って険しかった表情がゆるりと緩んで、褒められているみたいでつい嬉しくなった。
葵にぃは見かけによらずブラックコーヒーが好きだったりする。僕は苦くて飲めないけど…
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