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作業は夕方になるまで続いた。僕はその間書類をホチキスでとめて纏めるくらいの手伝いしか出来なかった。葵にぃの隣でパイプ椅子に座り、お茶を啜って風紀委員さんが頑張っている姿を眺めていた。
作業が終わった人から帰る準備を始めている中、僕はおぼんを持って湯のみを片付けに立ち上がった。
「柏木、だっけ?」
空になっていた湯のみを持つと、隣から声をかけられて驚く。他人が僕に驚くように、僕も普段声をかけられてないからビックリする。
声をかけてくれたのは風紀委員会である男子生徒。バッチを見る限り僕と同い年らしい彼は人懐っこい笑みを浮かべていた。
「うん…」
「委員長と仲良いんだな。」
「…お、幼馴染、だからね。」
僕のたどたどしい返事に目を丸くして「へぇー!」と大きくリアクションをとってくる。
「あんな柔らかい委員長初めて見たぜ?なんか甘いっつぅかさ、デレてるみたいな。」
僕の目にはいつもより格好良く見えていたけど、周りから見たらそんな雰囲気だったのかな。まぁ鬼の風紀委員長という別名を持っているくらいだから珍しいのかもしれない。
けど、なんだかそうやって僕にだけ柔らかく接しているんだと思ったら少し嬉しくて、優越感を感じて。でも決していつもそんな甘いわけではないことをこの人は知らないのだろう。
「茶、ご馳走さま!うまかったよ。またな!」
「は、はい!また…!」
お茶なんて僕がいれても大差ない気がするけど、気遣って話しかけてくれて少し顔が緩んだ。
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