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予鈴が鳴った。
僕が慌てて動き出すと、ギュッと後ろから抱きしめられて何にもできなくなる。
「逃がさない。」
耳元で囁かれた言葉はいつもの朔先輩の声とは少し違って、色っぽい声だった。僕はなにも言えなくて、ただその温もりに包まれていることしかできなかった。
「ねぇ、」
「もう、じゅ、授業が…っ」
ドクドクとなる心臓の鼓動が腕に伝わっていそうで誤魔化すように大きな声を出すと、さらに強く抱き締められる。
「俺のこと、好き?」
「…っは、ぇ?」
この状況でどういうことだと完全に思考が停止してしまった。混乱してしまって「うぇ」「ぁ?」と言葉にならない声しか出せなくなる。
「…俺たち、付き合わない?」
その言葉を理解した途端に体全身に熱が走って、朔先輩の顔も見れなくて、何とか腕から逃れてバタバタと慌てながらカバンの中に弁当を突っ込んだ。
「飛鳥?」
「ひゃい!?」
手を掴まれて、大袈裟に反応してしまうとクスリと笑われてしまって、恥ずかしすぎる。これはからかわれているんじゃないかと考えが過ぎった瞬間。
「ちゃんと、考えておいて」
ふざけるでもなく、真剣にそう言われて逃げるようにその場から立ち去った。
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