第1章

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「やっぱりわかってないみたいだね」 「わっ…」 ネクタイを引っ張られ前のめりになると、葵にぃの顔がすぐ目の前にある。 うわぁ、可愛い。 「お前が僕に会いに来ないからだよ」 「へっ!?」 「なのにお前じゃない方来るし。」 また葵にぃの眉間にしわが寄る。 「僕が呼ぶ柏木飛鳥はお前だから。」 「……。」 「犬でもそれくらい覚えられるでしょ。」 葵にぃはそう言って僕のネクタイをパッと離して溜息をついた。 「葵にぃは僕に会いたかったの?」 「はぁ?」 「だって…会いにこないって…」 僕に会いたかったんだとしたら、嬉しいなあ。葵にぃが高校にいることは知ってたけど、すれ違っても気づかれなかったから。 「お前と会えなくて僕がさみしがるとでも思った?」 「おも…わない。」 そう答えるとふんっと鼻を鳴らして僕をキッと睨んだ。 「お前みたいな馬鹿な犬がいないと落ち着かないだけだ。」 そう言って椅子を回して後ろを向いてしまう葵にぃ。 うーん、じゃあ今は落ち着いてるってことかな?
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