第1章

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そしてさっきのことは頭の隅に追いやって真面目に勉強を受けた。 次の授業は移動教室で、僕はロッカーから教科書とノートを取り出して廊下へと出た。 階段を二つ下りて、渡り廊下を進んで突き当たりにある視聴覚室でビデオを見るらしい。 僕は階段を二階分下りて廊下の隅を歩くとヒソヒソと生徒たちが声を潜めて何かを話している。 「あの髪色やばいよね」 「なんかちょっと近寄りがたいっていうか…」 「先輩に目つけられてるらしいぜあいつ。」 一瞬僕のことかと思ったけど、みんな僕のことなんて眼中になくて、僕の向かいから歩いてくる人を見ている。 僕が顔をあげるとその人と目が合った。 「あ、れ……」 相手の目も見開いて、僕が口を開こうとするとその相手は僕の手首を掴んで歩き出した。 昨日とは雰囲気が違うその人に戸惑いながらもついていくと、そこはトイレだった。 「昨日振りっすね!」 さっきの厳つい顔と雰囲気とは違い、柔らかな笑みを見せてくれるその人物は、ペットショップの店員の陽向さんだった。
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