第1章

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「そんなに見ても焼きそばパンは譲れないよ。」 「あ…や、違うんです!」 どうやら見つめすぎたらしく、東雲さんは少し居心地悪そうにして焼きそばパンをかじった。 「お弁当は食べないんですか?」 「食べないっていうか、作ってくれる人がいないだけ。」 「え?」 「俺も作ろうと思えば作れるけど、朝はやっぱり寝てたいしねぇ…」 なんかいけないこと言っちゃったかもしれない、と少し不安になったが、東雲さんは何も気にしていないみたい。 「あの…それじゃあ……僕が作りましょうか?」 誰も作る人がいないなら、僕が作ろうかなって思い切って言ってみたけど返事は無い。 ちらりと東雲さんを見上げると、またクスクスと笑われた。 「あ…ごめんなさい。やっぱり厚かましいですよね…昨日会ったばっかりなのに……」 その笑いをマイナスの意味で捉えた僕が謝ると、笑って首を振る。 「違うんだよ。そういうことじゃなくてさ…」 じゃあどういうこと?と思っていると東雲さんが口を開いた。 「男が男に弁当ってなんか面白くて…俺、女の子には作ってもらったことあるけど男にはまだ一回もないよ。」 そう言われて初めて気づいて赤面していると、お弁当の玉子焼きをヒョイっと東雲さんに取られてしまった。
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