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「こんにちは、比嘉(ひが)先生」
声を掛けるが返事が返ってきたことは殆どない。
窓際で黙々とデッサンをしている比嘉先生は美術部の顧問である。
いつも絵を描く時は集中していて、話しかけても肩をトンと叩いても気付いてくれない。
僕の影が薄いせいかもしれないけど…
僕は1人でパネルを用意して比嘉先生から少し離れたところに用意する。
ううん、今日は何を書こう…いつも頭に思い浮かんだものを描くけど……
比嘉先生の絵を見ると、水彩画を描いていて、どこかの道の風景を書いているようだ。
チラリと窓の外に目をやると校庭で制服姿の男子生徒がサッカーをしている。
あ……柏木君だ。
僕はいつも柏木君の後ろ姿を見ているせいかすぐに柏木君を見つけることが出来る。
窓に向けていた視線を前の紙に移す。
瞳を閉じて脳内にふわりと浮かんだものを鉛筆に伝えていくように描く。
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