第1章

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「俺も柏木の絵は嫌いじゃない」 比嘉先生は人の絵に口出しすることはなくて、デッサンを描いていても褒められたことも指摘を受けたこともない。 勿論アドバイスをもらいに行けば答えてくれるが。 だから先生に少し褒められた気がして嬉しかった。 今日描いていたのは授業中見える柏木君の後ろ姿。柏木君をみていたら何となく頭に浮かんだのだ。 なんか僕、気持ち悪いかも…… 毎週木曜日、美術部の活動がある。僕と先生しかいないけど、それもなんだかアリかもしれない。 「せ、先生…僕にもっと色んなこと教えていただけませんか!?」 「……」 僕はもっと絵を上手に描きたくて、先生にお願いしてみるが先生は顔色一つ変えず僕を見下ろしていた。 「…無理だったらいいんですけど……」 語尾になるにつれて声が小さくなって終いには俯いてしまう。 「弟子」 先生の言葉に顔を上げる。 「で、し…?」 聞き返すと先生は頷き、パネルを隅に置きにいった。 先生の、弟子…かぁ。 断られると思ってたから嬉しくてまた口元が緩んだ。
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