第1章

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「え……?」 僕はそれが信じられなくて聞き返すように呟いた。それに対し、姉さんはいつもと変わらず無表情だ。 「困惑することはわかっている。2人には母さんが一人しかいないことも。」 「お父さんは…もうお母さんのこと好きじゃないの?」 そんなことはないってことわかっている。毎日仏壇の前で手を合わせている姿をよく知っているから。 「違う!…俺は、母さんを愛している。でももう1人幸せにしたいと思った人がいるんだ。」 「………。」 その必死な表情に何も言えなくなる。 「でも…2人の事を1番に考えたい。だから2人が嫌と言うなら結婚はしない。」 父さんはいつも僕たちのことを1番に考えてくれる。 でもそれなら父さんの幸せは?誰が幸せにしてあげられる? 「お父さん、その人を幸せにしてあげられる自信はある?」 「………もちろん。」 「お父さんはそれで幸せになる?」 姉さんの言葉に父さんは一瞬目を見開き、そのあとしっかりと頷いて微笑んだ。
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