The Flower

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 The Flower  斉藤花と言う名前を見たのは久しぶりのことになる。  20歳の僕の年齢から考えて8年前。  小学校の卒業式で別れた僕の初恋の女の子の名前だ。  斉藤花。  彼女は裏切り者の女の子だ。  僕はずっと、彼女からの手紙と電話を待っていた。  どうしてこんなに放っておかれたのか。  僕には斉藤花のことが全くわからない。  僕と彼女は、ただの友達なんかじゃ無かったと今でも思う。  しかし、僕が勝手に思っていただけで、実際はそうではなかったらしい。  8年間もずっと連絡もくれなかったのだから。 『これ、引越し先の電話番号と住所』  確かに僕は言ったし、渡した紙にははっきりと書いてあったはずだ。  鉛筆で書いて、そのあとボールペンでなぞった感触を、今でも覚えている。
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