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さて、小学5年生。
クラス替えで、僕は件の泥棒女と違うクラスになったが、失った友達は取り戻せず、靴は隠され、教師からは『自己責任。お前はそれだけのことをした』と言う理不尽な言葉をもらっていた。
一方、クラス替えで泥棒女と一緒のクラスになった斉藤花は、僕とほぼ同じ展開で犯人にされて孤立して、僕と同じように放課後、外をさ迷っていた。
確かあれは11月。
とても風の強い日で、とても寒かったのを覚えている。
そして、そんな冷えから逃げ込んだ公園の、ドームの形をした遊具の中に、同じように逃げ込んでいた眼鏡をかけた大人しい少女。
それが斉藤花だった。
正直、遊具の内部に入って顔を合わせた時、僕は逃げ出そうとした。
クラスは違うけれど、一度くらいは学校でその顔を見たことがあったからだ。
自分以外は全部敵。
一刻も早くそこから立ち去りたいと、僕は遊具の入り口に戻る。
だが、公園の外に自転車に乗ってゲラゲラと笑っているクラスメイトを見つけた瞬間、僕は再び遊具の中に戻っていた。
それは、どうしても仕方の無いことだ。
怯えた表情の斉藤花が、僕を見て「なんで」と口を開いたのも仕方の無いことだ。
多分、仕方のないことだった。
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