The Flower

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「なんで戻ってきたんですか? 私のこと、虐めるんですか?」  斉藤花は泣きそうな目でそう言って僕を見た。 「虐めないよ」と僕は言った。 「会いたくない奴が、外にいるんだ」  ゲラゲラと言う笑い声が、今度ははっきりと聞こえた。  斉藤花が、目を大きく開いて、僕を見る。 「あなたも、逃げているんですか?」 「逃げてない。ちょっと隠れているだけ」  別におかしなことを言ったわけではない。  変えようのない事実なのだ。  斉藤花は、それを確かめるように、そっと視線を遊具の外に移した。 「あ、私も、出れない、です」  どうやら共通の敵を持っているらしいと、僕は思った。  なぜなら、その中に、あの泥棒女がいたのだ。  出れるはずが無い。  その時、公園のベンチで談笑を始めた泥棒女一味のせいで、その遊具の中で息を殺して潜むことになった僕達だったが、その日以降、なぜか頻繁に会うことが多くなった。  偶然だろうか。  いや、その日に存在を知ったというだけで、もっと前から同じ場所にいたのかもしれない。  ともかく、そうやって、時間をかけて僕達は仲良くなっていった。
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