13人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで戻ってきたんですか? 私のこと、虐めるんですか?」
斉藤花は泣きそうな目でそう言って僕を見た。
「虐めないよ」と僕は言った。
「会いたくない奴が、外にいるんだ」
ゲラゲラと言う笑い声が、今度ははっきりと聞こえた。
斉藤花が、目を大きく開いて、僕を見る。
「あなたも、逃げているんですか?」
「逃げてない。ちょっと隠れているだけ」
別におかしなことを言ったわけではない。
変えようのない事実なのだ。
斉藤花は、それを確かめるように、そっと視線を遊具の外に移した。
「あ、私も、出れない、です」
どうやら共通の敵を持っているらしいと、僕は思った。
なぜなら、その中に、あの泥棒女がいたのだ。
出れるはずが無い。
その時、公園のベンチで談笑を始めた泥棒女一味のせいで、その遊具の中で息を殺して潜むことになった僕達だったが、その日以降、なぜか頻繁に会うことが多くなった。
偶然だろうか。
いや、その日に存在を知ったというだけで、もっと前から同じ場所にいたのかもしれない。
ともかく、そうやって、時間をかけて僕達は仲良くなっていった。
最初のコメントを投稿しよう!