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話は変わるけれど、当時の僕は、少し荒れていたと思う。
別にぐれてたわけではない。
だけれど、その時の僕は少しだけ世界を呪い始めていた。
僕を独りにする世界に対して、憎み、そっちがそのつもりなら、僕は何かに対して優しくなんかなれないとさえ思っていた。
人間として、少し壊れてしまったのだと、そう思う。
当時と言ったけれど、今もだ。
僕はどこか冷めた目で世界を見つめている。
だけれど、あの時。
斉藤花といる時だけは、僕は優しくなれたのだ。
心は穏やかで、彼女のことをとても特別な存在だと感じていた。
繰り返される日々。
外は公然とした悪意が溢れていて、僕達は孤独で、それでも二人で生きていくことが出来た。
身を寄せ合って、寒い冬を乗り越え、春のうっとおしさを振り払い、夏の熱から隠れ、再び厳しい冬を乗り越えた。
小学6年生。
「将来は映画を作る人になりたい」
斉藤花は、そう言って、僕に夢を語った。
シュワルツネッガーやシルベスタローン、トム・クルーズが好きな彼女のささやかな夢だった。
「じゃあ、僕は俳優にでもなろうかな」
身の程知らずにも程がある。
そうして6年生の卒業式の日、僕達は別れた。
同じ中学になることは無いのはお互いが分かっていた。
なぜなら、僕は遠方に引っ越すことが決まっていたし、彼女もごく近所にだろうが引っ越すことが決まっていたので。
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