The Flower

8/19
前へ
/19ページ
次へ
 今、花ちゃんから送られた手紙をもう一度読む。  大学の住所はU県、上星市。  前住んでいた街よりかはいくらか近いが、やはり遠方に変わりはない。  それにしても、なぜ今なのだろう。  大学2年で、夏休みの今、割と暇しているのは事実だが、いくらなんでも遅いよ、花ちゃん。  もっと早く連絡が欲しかったよ。  僕は目頭に、熱いものを感じて、頭を振る。  だがしかし、すでに僕は思い出の中の斉藤花を思い出し、いてもたってもいられなくなっていた。  大人しそうな雰囲気を持っていた少女。  眼鏡は黒縁で、いつもズボンを履いていた。  何回かスカートもあったかもしれないけれど、カッターで切られたとか言って履くのを止めてしまったのを覚えている。  やはり、どちらかと言うとジーンズにスニーカーと言う印象が強い。  ああ、会いたい。  僕は日付を確認すると、インターネットで上星市までの乗換えを確認した。  新幹線と電車だけで行ける。  僕はそれだけを確認すると、8月の15日を待った。  上映時間は午後の15時。  当日の朝に出ても、早めに出発すれば十分間に合う。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加